大判例

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名古屋高等裁判所 昭和29年(う)487号 判決

大河内秀憲の司法警察員並びに検察官に対する供述調書、坂口和子の検察官に対する供述調書、被告人の司法警察員並びに検察官に対する供述調書及び名古屋郵政局長の証明書によれば被告人が発行した「ローカル愛知」新聞は毎月三回発行の予定で第三種郵便物の認可があつたが、実際は毎月一、二回(一回の発行部数一千部以上)の発行に止まり、稀に三回以上発行することがあつたに過ぎず、かつ他の日刊新聞又は雑誌に折込んで配達頒布していたことを認めることができる。従つて公職選挙法第百四十八条第三項の要件を備えた新聞紙でないこと明らかである。

然れども凡そ新聞紙とは反覆する意思を以て一般民衆に頒布することを主たる目的とするもので、その頒布が有償であることを原則とすれば足るところ同法第百四十八条の二第二項にいう新聞紙は右にいう程度の広義の新聞紙であれば十分であり、第百四十八条第三項の要件を備えた厳格な意味の新聞紙であることを要しないと解する。蓋し第百四十八条は社会の報道機関である新聞紙が選挙に関する報道、評論を掲載するの自由を妨げられないことを目的として規定されたものであり、第百四十八条の二の規定は新聞紙が特定候補者の為の選挙運動に不法に利用されることを禁止したものであつて、全くその目的を異にし、而も後者は前者の厳格な意味における新聞紙でなくとも、いやしくも前示広義の新聞紙である以上、その読者に与える影響は甚大であつて、到底ビラ、ポスター、チラシの類ではないから法律は第百四十八条の二の規定を新設し、同条の新聞紙と第百四十二条第百四十三条の文書図画とを区別し、第百四十八条の二の違反者をより重く処罰し、厳重に取締ることとしたものと信ずる。果して然りとすれば第百四十八条の二の新聞紙は第百四十八条第三項の規定する厳格な意味の新聞紙であることを要しないこと言をまたない。

而して記録を精査するに本件「ローカル愛知」新聞は前説明の如く右の題号の下に昭和二十六年秋冬の頃より月三回発行(小牧局第三種郵便物認可)定価年六百円ということで被告人の手で刊行されてきたものであり、前示広義の新聞たるの要件を備えたものであるから第百四十八条の二第二項にいう新聞紙であること明らかである。従つて原判決が被告人の本件ローカル愛知を公職選挙法第百四十八条の二の新聞紙として同法第二百二十三条の二を以て処断したのは適法であつて、所論の如き法律の適用を誤つた違法なく、論旨は理由がない。

同第一点について。

公職選挙法第二百二十四条は「前四条の場合において収受し又は交付を受けた利益は没収する。その全部又は一部を没収することができないときはその価額を追徴する」と規定している。而して論旨は「収受し又は交付を受けた利益」とは収受し又は交付を受けた金そのものを意味しないから、本件における利益とは新聞発行に要した該費用を控除しその後に残つた利益と解すべきであるが故に、原裁判所が被告人が水野実郎及び平井章より供与を受けた金額全部を被告人から追徴する旨判示したのは違法である旨主張するが、同条の規定する利益とは供与を受けた金銭、物品その他財産上の利益若しくは饗応接待等を意味するものであることは多言を要しないところ、被告人は原判決認定の如く水野実郎及び平井章に対し「ローカル愛知」に有利な報道、評論を掲載する又はした報酬として合計金四万九千円の供与を受けたものであるから、該金員が被告人が収受し又は交付を受けた利益であつて、現実に被告人が右記事を掲載する新聞を発行するに要した諸費用とは何等関係がない。従つて原裁判所が本件新聞発行に要した費用につき審理しなかつたのは当然であつて、原判決には所論の如き審理不尽又は事実誤認はない。論旨は理由がない。

(裁判長判事 高城連七 判事 柳沢節夫 判事 赤間鎮雄)

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